
この記事を書いている私は、元飲食店経営者で経営コンサルの国家資格「中小企業診断士」でもあるきうい🐾です。
負債7億円で赤字営業の『つぶれかけたカフェ』を5年間経営し、年間営業利益1100万円稼ぐ繁盛店に立て直しました。
さまざまな勉強と試行錯誤をしてきたので、成功と失敗のノウハウがあります。
Excelを使った数字管理、業務改善による利益率アップ、IT導入支援による効率化、補助金申請を得意としています。
つぶれかけた飲食店のメニューに魅力がない理由は、価格が安くてもおいしくない「安かろう悪かろう」だからです。お客に選ばれる店になるには、価格に見合う満足を与え、競合店にはない独自性のある「看板メニュー」が必要になります。
安かろう悪かろうがダメな理由
客数を増やすポイントは2つあり、1つはコストパフォーマンス(コスパ)の高いメニューがあることです。しかし、つぶれかけた飲食店は「コスパが高い=低価格のメニュー」だと勘違いしている節があります。
つぶれかけた飲食店は客数が減ると販売価格に原因があると考え、近隣の競合店との価格競争で値下げをします。値下げをしても今までと同じように利益を出そうとすると、食材の分量を減らすか品質を落として原価額を減らすことになります。そのような苦肉の策で出来上がったメニューは「安かろう悪かろう」なので、価格が安くてもお客が満足することはありません。本来のコスパの高いメニューとは、価格の高い安いに関係なく、「価格以上の満足度をお客が感じるメニュー」のことです。
もう1つは、競合店と差別化した独自性のあるメニューがあることです。パンケーキで例えると、ホットケーキミックスの粉末をパッケージに記載されたレシピ通りに作って販売しても独自性のない平凡なパンケーキになります。独自性のあるパンケーキには生地にメレンゲを混ぜて焼くことでふわふわ食感が特徴のスフレパンケーキがあります。ハワイ創業のエッグスンシングスのように植物性の生クリームを使ったふわふわで軽い食感のホイップクリームを山盛りにすることも独自性になります。ただし、人気のメニューは競合店に真似されると独自性が弱まるため、メニューの改良を続けたり、店のブランドを築いたりして差別化する必要があります。
なお、低価格だけが特徴の場合でも競合店よりも圧倒的な安さがあれば独自性があると言えますが、競合店も価格競争をして値下げすると独自性はなくなります。
余談になりますが…
飲食業界では流行ったメニューはすぐにパクられます。しかも、飲食業は商圏の範囲が限られているので、メニューをパクっても近隣に似たようなメニューの店がなければ悪質な印象を与えることなく、独自性のある魅力的なメニューがある店として行列になることはめずらしくありません。
ただし、流行りのメニューをパクることが有効だとしても、パクらせてもらった店をリスペクトすることは大切だと思います。前にモンブランのマロンクリームをお客の前で絞って完成させるパフォーマンスが特徴の「生搾りモンブラン」をパクった店がテレビで紹介されていました。しかし、その店の経営者は自分がオリジナルで考えたと誤解させるコメントをしていたので下品だなと感じました。
リニューアル前のガレット
『つぶれかけたカフェ』は店内でクレープを生地から手作りして焼いているので、クレープ生地を使ったガレットは独自性のあるメニューでした。しかし、メニュー名に生ハムとモッツァレラチーズを入れているのに分量が少ないせいで味の存在感はなく、トマトととろけるチーズがメイン具材になっているガレットでした。また食べたいとは思えない、魅力のないガレットだったのでメニューのリニューアルでは最初にテコ入れをしました。
生ハムとモッツァレラチーズのガレット

販売価格 | 630円(税抜き573円) |
原価率 | 39% |
特徴 | 生ハムは1枚の半分だけでトマトととろけるチーズがメイン具材になっている、ボリューム感のないしょぼい印象のガレット |
ガレットのリニューアル第1弾
「生ハム」をメインの食材にしたガレットです。原価額を抑えながらも分量を増やすために、生ハムは「見た目がきれいなスライス」と「形がふぞろいで価格が安い切り落とし」を組み合わせています。
ガレット生地は2枚の間にホワイトソースをはさんでボリューム感を出し、メニュー名をミルフィーユと名付けて独自性を出しました。
生ハムのミルフィーユガレット

販売価格 | 880円(税抜き800円) |
原価率 | 33% |
特徴 | 生ハムと水菜を立体的に盛り付けた、生地を2枚重ねたガレット |
リニューアル後の比較
販売価格はリニューアル前よりも250円値上げしたにも関わらず、前年同月比で販売数は1.8倍、売上は2.5倍、粗利益額は2.8倍もアップさせることができました。
生ハムのミルフィーユガレットの原価額はリニューアル前と比べると、ガレット生地が2倍になり、生ハムの分量が大幅増量しているにも関わらず40円しかアップしていません。この原価額にできた理由は、ネットの業務用卸売りサイトから激安のスポット品(メーカーが在庫処分価格で販売するアウトレット品)を探し出して大量に仕入れたからです。
立て直す前の『つぶれかけたカフェ』の仕入は、取引先業者の取り扱っている食材の中から選ぶだけなので、欲しい食材を安く仕入れるために新しい業者を探す発想は一切ありませんでした。
お客に喜んでもらえるメニューを作りたいのであれば、安易に原価率を上げたり、販売価格を下げたりするのではなく、品質の高い食材を可能な限り安く仕入れる努力をして、価格以上の満足度を与えることが大切です。
安かろう悪かろうを脱却するリニューアルによって、売上、原価率、営業利益を改善できたことで「原価をしっかり使って満足度を高くする」という考え方は間違っていなかったと自信を持ち、今後の経営改善の方向性を固めることができました。
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