飲食店の計数管理(数字分析)の方法を勉強している人
・飲食店の計数管理って何をすればいいの?
・POSレジの管理画面を見てもよくわからない
・時間別の売上分析のやり方を教えてほしい
・飲食店経営にEXCELは役立つの?
こんな疑問、悩みにお答えします。
この記事を書いている私は 、元飲食店経営者で経営コンサルの国家資格「中小企業診断士」でもあるダメ飲食店改善ディレクターのヒロサワです。
直近では社長として負債7億円で赤字経営だった、つぶれかけカフェを利益1100万円稼ぐ繁盛店に立て直しました。
さまざまな試行錯誤をしてきたので、たくさんの成功と失敗を経験しています。
つぶかけカフェの再建時に大きく貢献した、POSレジのデータとEXCELを使った「時間別の売上分析」についての解説と活用方法を紹介します。
この記事を読むと、EXCELを使った数字分析の慣れることができます。
EXCELの分析手法をマスターすると、飲食店の営業状況を数字で把握でき、成功確率の高い経営改善できるヒントを見つけることができるようになります。
時間別売上データをEXCELで分析する方法
営業時間中の1時間ごとの売上データを分析したことはありますか?
時間別売上データがあると、「モーニング」「ランチ」「カフェタイム」「深夜」など、時間帯ごとに区切った売上状況がわかるようになり、売上を増やす施策の成功率を格段にアップさせることができます。
私が負債7億円のつぶれかけカフェを繁盛店にできた理由に、3つの売上データを活用していたことがあります。
- 日別売上データ
- 時間別売上データ
- 商品別売上データ
これらのデータを分析することで、狙いを絞った施策を考えたり、実行した施策の成功失敗判断を早い段階で見極めたりすることで効率化でき、たくさんの施策を行うことができました。
今回は「時間別売上データ」について解説します。
時間別売上データとは?
1時間ごとにレジで会計した売上金額の合計のことです。
算出方法は、1時間ごとに分けた伝票を電卓で計算したり、古いレジスターなら内蔵機能でレシートに出力したりしますが、タブレットのPOPレジならば管理画面から簡単に見ることができます。
分析するには「EXCEL」は必須
時間別売上データを「見るだけ」ならば、POSレジの管理画面だけで十分です。
しかし、POSレジの管理画面は必要最低限の情報(本日分だけ、当月分だけ、など)しか表示してくれないので「分析する」には不十分です。
分析して情報を読み取るには、データをCSV形式ファイルを出力して、エクセルで加工しないと使い物になりません。
POSレジはいろんな会社がサービスを提供していますが、Airレジは月額無料でありながらCSV出力機能もあるのでオススメです。
エクセル加工:視覚化
数字の羅列だとなかなか頭に入ってきませんが、グラフにしたり、数字の大きさによって自動で色分けをすることで、直感的でわかりやすくなります。
グラフ(棒・円)
ヒートマップ(自動塗り分け)
EXCEL は「条件付き書式」という機能を使うと、数字の大きさによって自動でセルの色塗りをしてくれるので、分析時にとても便利です。
エクセル加工:比較
よく利用している時間別売上の比較方法は次の3種類です。
日別・時間別売上比較
日別のデータを連続して並べることで、どの時間帯の売上が大きいか、小さいかがわかりやすくなります。
この画面例だと、14~17時台と23時台は売上が高く、7~10時台と20~21時台の売上が低いことが読み取れます。
また、ランチやモーニングなどの時間帯を限定した施策の場合、1日単位で効果が出ているかのチェックをすることができます。
売上の数字が少なすぎる、多すぎるなどの「異常値」はトラブルが潜んでいる可能性が高いので、現場従業員への確認は必須です。
「寝坊による遅刻で開店時間が遅れる」「シフト人員不足で閉店時間を早める」「POSレジの通信障害」など、事後報告なしでやっていた問題を発見したこともあります。
月平均・時間別売上比較
1ヶ月ごとの平均売上にすると、「月の前半後半」「曜日別」などの細かい動きは見えなくなりますが、全体的な売上の増加・減少の傾向を読み取ることができます。
売上は「複数の施策の積み重ね」の結果なので、月単位で見ることで、店の実力が上向きなのか、下向きなのかがわかりやすくなります。
平日/休日別・時間別売上比較(曜日別)
業種や立地によって、平日と休日によって売上が違うのは誰でも気づきますが、時間別に比較すると大きな違いが見えてきます。
▼休日
・10時台から売上が増え始める
・14~17時台のピークタイムは、平日の1.5倍になる
・23時台は平日と変わらない
「時間別売上データ」を使わないダメな例
時間別売上データを使うことで狙いを絞った施策で成功率を上げることができますが、逆に時間別売上データを使わずに施策を考えると成功確率が極端に低くなります。
数字のデータだけでは店の状況や余力がわからないので、「販売しているメニュー」「店の混雑状況」「お客・従業員の動き」などを把握することが重要です。
ダメなカフェがやりがちな失敗する施策例
「どうやって売上を増やそうか?」
「流行りのタピオカを売ろう。」
▼
【販売後】
「おお、そこそこ売れてる。」
▼
【月末】
「あれ? 売れているのに店の売上はあまり増えてない?」
「次はナポリタンを売ろう。」
▼
【販売後】
「うーん、あまり売れてないな?」
▼
【月末】
「やっぱり売上は増えてないな…」
「それなら次はスパイスカレーを売ろう。」
…なんてことをダメなお店ではやりがちですが、「時間別売上の分析」と「自分の店の能力の把握」ができていないため、失敗の確率が高くなります。
失敗する理由:流行りのタピオカ
1時間あたりの売上の限界
休日のカフェタイムのピーク(15~16時台)の売上は45,000円であり、店の混雑状況を観察すると客数稼働率(席の埋まり具合)は限界になっています。
そのため、「流行りのタピオカで集客して売上を増やす」という施策だと、休日15~16時台は客席稼働率が今まで以上に上がらないので、1時間あたりの売上を増やすことはできません。
流行りのメニューで集客する狙いは良いので、ヒロサワならば「客単価を上げる:高価格、セットメニューにする」や「回転率を上げる:提供時間を短くできるオペレーションを考える」なども同時に意識して行います。
集客できる商品開発力がない
休日15~16時台は売上の限界でも、ピークタイム前後の時間帯や平日のカフェタイムの客席稼働率を上げる余地は確かにあります。
しかし、それには近隣の競合店よりも優れたメニューである必要がありますが、ダメな店は商品開発力がないために二番煎じで平凡なのに、流行りのメニューを作ればお客が来ると勘違いしているのです。
平凡な新メニューが売れたとしても、何かしら注文するお客が新メニューを頼んだだけでは店全体の売上は変わりません。
お店を素通りするつもりの人が店頭の新メニューポスターを見て入店したり、SNSで新メニューの写真を見た人がわざわざ来店してくれない限り、店全体の売上は増えないのです。
失敗する理由:ナポリタン・スパイスカレー
需要のない時間帯
フードメニューで、ランチタイムとディナータイムの売上を増やす狙いは良いです。
しかし、業態や立地、近隣の競合店によっては、どうやっても客数を増やすことができず、暇な時間帯であるアイドルタイムは発生してしまいます。
カフェの場合、フードメニューはサンドイッチがメインで、店によってはパスタなどの洋食もありますが、しっかりと食事をしたい人は近隣のパスタ専門店、洋食屋、ラーメン屋、定食屋などに行ってしまうので、カフェには「時間がないからこの店でいいや」というお客しか来ません。
需要のない時間帯(アイドルタイム)は「売上を増やそうと無理にがんばらない」ことが意外と有効です。
その代わり、経費を減らしたり、利益率アップを意識します。
・経費を削るためにシフトを減らす
・店内の清掃や仕込みをやる
・利益率の高いメニューだけを売る
ちなみに、行列するスイーツの人気店もランチタイムやディナータイムは並ばずに入店できることが多いので、市場調査するときはピークタイムを外してお店に行っていました。
まとめ
・「時間別売上データ」を分析すると、施策の成功確率がアップする。
・POSレジの管理画面だけでは不十分で、「CSV形式ファイル」を出力してEXCELで加工しないと、分析はほぼ不可能。
・エクセルでは「グラフ」「ヒートマップ(塗り分け)」「比較」の加工をする
・使える時間別売上の比較方法には「日別」「月平均別」「休日・平日別」の3種類がある
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